大腸カメラ検査(大腸内視鏡)
大腸カメラは、大腸内視鏡のことですが、一般的には「大腸内視鏡検査」(正式には「下部消化管内視鏡検査」)のことをいいます。内視鏡を肛門から挿入し、直腸から盲腸までの大腸粘膜を直接観察できるほか、観察時に早期大腸がんや前がん病変であるポリープを発見した場合、摘出が可能なのが最大の特徴です。検査中に組織を採取した場合、生検を行い確定診断まで可能となります。大腸ポリープや早期大腸がんを検査中に切除する日帰り手術『ポリペク』も可能です。
大腸は胃などの上部消化管に比べ、くねくねと曲がっていることに加え、粘膜組織が薄く、より細心の注意を要すことから、大腸カメラ検査は、胃カメラ検査に比べ難易度が高いものとなっています。
当院では、内視鏡検査に限らず、新型肺炎感染予防に特に留意しております。
内視鏡検査(胃カメラ)においては、十分な広さがある方の内視鏡室のみを使用し、外気直接取り入れによる換気、状況によっては常時換気とさせていただいております。
外気取入量が多く、室温が低い場合もございますが、ご理解とご協力をお願いします。
大腸カメラ・大腸内視鏡検査はどんなひとがうけるの?
大腸カメラ・大腸内視鏡検査は、大腸に病変や大腸がんが発生しそうな確率の高い人が受けるべき検査です。大腸がんは30歳台後半から発生リスクが高まり、60代がピークとなります。そのため、40歳に近づいたころから定期的に大腸カメラ・大腸内視鏡検査をすることが、大腸がん予防に有効です。
下記に該当する方は、年齢にかかわらず検査して下さい。(もしくは、検査したほうがいいでしょう)
- 大腸がんになった親族がいる
- 食事が高カロリー
- 肥満
- 飲酒習慣がある(あった)
- 喫煙が歴ある(あった)
便潜血検査では進行した大腸がんを見逃す可能性があります
健康診断などで、便潜血検査を行うことが多いですが、2日法で行っても見逃すことが多いです。というより、かなり進行するまで検査で陽性になりません。出血を起こすようながんには有効ですが、できた位置によってはかなり進行した大腸がんでも出血を起こさず陰性になることが珍しくありません。早期の大腸がんやポリープを見つけることはまずできません。陽性になった場合、かなり進行しているケースがほとんどで、命にかかわります。
便潜血検査で陰性でも、40歳を超えたら、大腸カメラをご検討ください。
なお、出血の症状を示す病気はがん以外にもありますが、がんではないことを確認しておくことが、重要だと考えております。
なぜ大腸カメラ・大腸内視鏡検査をするのが大切なの?
大腸カメラ・大腸内視鏡検査で発見することのできる大腸がんは、早期に発見して適切な治療に着手できれば完治が可能な時代となり、早期発見のためニッ貸せない検査を実施する必要性が高いからです。
ただし、早期発見で治る可能性の高い大腸がんですが、日本では大腸カメラ検査の実施率が低いため、自覚症状がでるほど進行してから発見されるケースが非常に多く、日本人のがんによる死亡原因として、大腸がんはいまでも上位にあります。したがって、早期発見のため、定期的な大腸カメラ検査は不可欠であると考えられます。
大腸がんは、進行するまで自覚症状があまりでません。ましてや、前がん病変である大腸ポリープには、自覚症状がありません。潜血検査などでも発見の可能性がありますが、出血を伴う状態にならないと発見できないため、早期に確実に発見が可能なのは現在のところ、大腸カメラ検査だけです。
なぜ大腸カメラ・大腸内視鏡検査を定期的に受ける必要があるの?
大腸カメラ・大腸内視鏡検査は、大腸がんの早期発見につながるだけでなく、検査時に病変摘出を通じて、がん予防にもつながるからです。
大腸がんの多くは、放置された大腸ポリープから発生すると考えられており、大腸ポリープは、前がん病変と呼ばれています。この大腸ポリープの段階で切除することが、大腸がんの予防になるのです。現在の大腸カメラ検査では、大腸ポリープや早期の大腸がんが疑われる場合、治療が可能な場合は、その場で切除します。日帰り手術とも呼ばれています。
大腸カメラ検査を定期的に受けることで予防できることから、定期的に検査する方を増やすことで、日本で増加している大腸がんによる死亡数は大きく下げることができます。進行すると、外科手術、放射線・抗がん剤治療と患者様のご負担が格段に高くなります。
大腸がんの発生は40歳ころより上昇します。症状がない状態でも定期的な検査を受けてください。
大腸ポリープ
大腸粘膜にできる隆起性の病変です。腫瘍性ポリープ、非腫瘍性ポリープがあります。
腫瘍性は、病理学的には腺腫です。成長すると腺がんである大腸がんになります。
非腫瘍性は、大きく成長すると腫瘍化するため、こちらも切除します。
大腸カメラ検査時にポリープを見つけた場合、可能な限りその場で切除します。
大腸ポリープ切除
ほとんどの大腸がんは、放置された大腸ポリープから発生します。前がん状態である、大腸ポリープの段階で切除すれば、将来の大腸がんを予防できます。大腸カメラ検査中にポリープを発見した場合、その場で内視鏡的に切除することが可能です。さらに、当日中に歩いて帰宅できます。検査と同時の切除は日帰り大腸ポリープ手術と呼ばれています。
大腸の内壁は胃に比べ非常に薄く、検査自体もさることながらポリープ除去には、経験と技量を要します。外科的処置に対し内視鏡的な処置は患者様の負担が軽いものの、帰宅後は安静とし、重労働はしない。刺激物やアルコールの摂取を控えるなど、1週間〜2週間の間は注意が必要です。期間には個人差があり、医師の指示に従っていただきます。
検査時のポリープ切除は、事前に患者様に説明し納得頂いてから行います。切除後に出張、旅行を控える必要があり、検査日もそれらを考慮する必要があります。
内視鏡的ポリープ切除術
コールドスネアポリペクトミー
高周波電流を使わず、締め付けて切除します。直後に出血がありますが、すぐ止血されます。穿孔や遅発性の出血がなく安全な手法です。
ポリペク(ポリペクトミー)
隆起した大腸のポリープに対して行う切除術のことをいいます。ポリープの茎に電流を流す針金をかけて電流を流します。採った組織を検査し、ポリープの中にがんが含まれていないかを確認していきます。平坦な病変に対しては上手く切り取ることができないので、EMRやESDという方法を使います。
EMRは、内視鏡的粘膜切除術で、消化管の粘膜に生理食塩水などを注入して持ち上げ組織を切除します。
ESDは、内視鏡的粘膜下層剥離離術で、昔は外科的に切除を行っていた病変を内視鏡で切除することが可能です。
大腸内視鏡で用いるスコープは、長めになっており、直腸や結腸をはじめとした回盲弁などといった大腸に関わる幅広い範囲を観察することが可能です。回盲弁とは、大腸における入口の部分のことを指しています。大腸は真っ直ぐではなく、ぐねぐねと曲がっているということが大きな特徴です。胃と比較すると構造が複雑になっているため挿入が難しくなる傾向にありますが、小腸に入る手前くらいまでであれば問題なく挿入をすることができるようになっています。近年は医療分野における技術が進歩してきたこともあって、用いられるスコープの硬さが手動可変となりました。そのため、昔に比べスムーズに体内に入れていくことができるようになっています。大腸内視鏡についている鉗子口と呼ばれるものを活用すれば、いろいろな器具を使うことができるようになりポリープを切除したり組織を採取するなどといった処置を行うことが可能です。
大腸ポリープ切除後の注意点
切除後、約1週間は出血などの合併症が起こる可能性がありますので、それを予防するために、切除後の生活に制約があります。ポリープの大きさ、処置の内容、個数などにより、制約の内容や日数が変わります。
出血がある場合
少量の血が混じる程度なら、数日で止まりますので心配はありません。ただし、出血量が多い、出血と同時に痛みもある場合は、当院へ連絡して下さい。
食事や入浴
普通の食事で結構ですが、当日の食事は刺激物や油脂分の多いものは食べないでください。入浴は血行が良くなるため、出血の可能性が高まりますので、当日は軽いシャワーにしてください。翌日からは入浴していただけます。
旅行や出張
切除後1〜2週間前後は、通院以外の旅行、出張は控えて下さい。大腸カメラ検査日は、事前にそれらを考慮する必要があります。海外などの遠方ではトラブルへの対応が難しいため1週間程度は控えていただきます。
その他
血行をよくする飲酒は、指定された期間、禁酒して下さい。
散歩ならば、当日から構いませんが、ゴルフ、テニス、ジョギング、水泳などの運動は指定された期間、控えてください。激しい運動、腹圧のかかる運動は、2週間程度控えていただきます。
当院の大腸カメラ検査の特徴
苦痛の少ない大腸カメラ検査
大腸カメラの技術的な進歩は著しく、それを使いこなす高い技術と経験がある術者による検査であれば、ほとんど痛みなく受診できます。
画像強調観察
通常観察と近接拡大観察を切り替え、精緻に診察します。
無送気軸保持短縮法
大腸カメラ検査での苦痛を感じるとすればそれは、ほとんどが挿入時に起こっています。カメラ挿入の際に、大腸を伸ばしたり押したりすると強く痛みます。大腸の曲がり具合が、患者様により異なりためです。
これは、無送気軸保持短縮法ですと、折りたたみながら検査しますので、苦痛や不快感がありません。
炭酸ガス送気システム(二酸化炭素)
大腸のヒダに隠れた部分も見逃さずに観察するため、炭酸ガス(二酸化炭素です)を送気し、大腸を膨らませます。通常の検査、空気を使うのでおなかの張りが長時間続きますが、当院では吸収の速い炭酸ガスを送気します。炭酸ガスは空気よりも吸収が200~220倍程度早いため、張りが速やかに解消します。吸収された後は二酸化炭素として呼気で自然に排出されます。従来、数時間継続していたおなかの張りが、検査後すぐに解消します。
回復室 リカバリースペース
入院設備もあることから、広いスペースで、安心して休憩できます。検査後は、点滴をしてお休みしていただきます。読書室やマッサージチェアなどもご用意していますが、切除時のご利用はご注意ください。
院内で下剤の服用を行います
大腸内視鏡検査の前に、大腸をきれいにする必要があります。そのための下剤の服用・前処置を院内でできる環境を整えております。
完全個室の準備室もご用意しております
当院では、一般的な準備室に加え、半個室、完全個室の準備室を用意しております。
準備室はたいてい、椅子もしくはソファーが1つ、間仕切りは簡易的なカーテンのことが多いようです。このような簡易的な施設のほうが、経過観察をする看護師の目がよく行き届き効率的で便利で、当院にもあり、皆様にご利用いただいております。
このほかに、完全な個室も設置しております。それぞれ6~8畳ほどの広さがあり、施錠可能なほか、ベッド、ソファー、トイレなどを設置しており、プライバシーを気にされる方や女性の方には特にご好評を頂いております。
検査の流れ
事前受診
- 大腸カメラ検査は、事前の準備が必要です。検査前に一度受診いただき、検査について説明し、必要なお薬をお渡します。普段服用する薬がある場合方には、前日や当日の服薬や休薬についても相談します。便秘がちな方には、数日前から服用する下剤も処方します。
検査2日前
- 水分を多くとり、消化の悪いものは食べません。コーヒーや紅茶には、ミルクやレモンを入れずに飲みます。
忌避する飲食物
- とうきび
- わかめ、昆布、のり、などの海藻
- きのこ
- セロリ、アスパラ、ゴボウなど繊維の多い野菜
- トマト・キウイなど細かい種のある果物
- ゴマ
- しなちく
- たけのこ
- ふき、わらび、うど、などの山菜
- みつば
- にら、もやし、ほうれん草
- つけもの
- ピーナッツ
- こんにゃく、しらたき
- 果実や果肉入りのジュースやヨーグルトドリンク
- 繊維や種の入ったスムージー
- アルコール
など
検査前日
事前診察の際に下記と違う指示をさせていただく場合もございます。ご留意ください。
- 前日の夕食は、夜7時までにすませていただきます。
- 前日は、朝食から消化の良いおかゆなどを食べます。
- 検査食をご用意しています。
- 水分摂取は、水やスポーツドリンクなど透明なものを、たくさん飲みます。夕食後のコーヒーや紅茶はミルクやレモンを入れないで、1杯程度。就寝前に薬を内服して頂きます。
- 午後8時ころにお渡しした水薬を飲んで下さい。
- 午後10時もしくは就寝前にお渡しした薬を飲んで、早めに就寝します。
検査食について
- 朝食(和風がゆ・みそ汁)、昼食(中華がゆ・すまし汁)、夕食(コンポタージュスープ)、間食(クッキー)がセットになった検査食を用意しています。
検査当日朝
- 検査当日は、検査終了まで食べられません。水分は、水かスポーツドリンクなど透明なものに限ります。
- ご自宅で腸管洗浄液を飲み始めるか、来院されてから飲み始めるかなどで、当日朝薬の飲むタイミングが変わります。事前診察の際に御相談ください。
- 当院では、前準備室が完備しておりますので、腸管洗浄液は来院してから飲み始める方が多いと思います。
ご来院
- 受付をお済ませください。
- 当院に来院した後、腸管洗浄液を約1リットル(飲む量は当日の状況で判断するので増減します)の水に溶かし1~2時間で飲み切ります。前日や当日の排便がない場合、腸管洗浄液を飲む前に必ずご相談ください。
- 腸管洗浄液服用後、約1時間で排便が起こり、水便が出ます。約2時間程度で便意が落ち着きます。
- 検査は、便が透明で黄色い水状になるまでできません。お待ち下さい
当院では、朝7時に吐き気止め一錠を飲んでいただいた後、8時20分ころまでに来院頂き、院内で下剤の服用を行います(事前診察の際に相談させていただきますが、指示がこれと異なる場合もありますので、ご了承ください)。
かなりハードですが、同日に胃カメラを施行(希望)する方は、まず胃カメラが終了してから、下剤の服用を始めます。
検査室へ
- 当院は、土曜日も可能です。
大腸カメラ検査
- まず、直腸診を行います。直径約12mmの内視鏡を挿入、無送気軸保持短縮法で大腸の一番奥まで内視鏡を進めます。そして、引き抜きながら観察します。その際、ヒダやシワの奥も見逃さないよう観察し、ポリープなどの病変があった場合、特殊光や色素で精密診断し、必要があれば内視鏡で組織を採取、あるいはポリープを切除します。
休憩
- 点滴をして30分程度お休みいただきます。炭酸ガス送気を使用しており、おなかの張りはほとんどありませんが、からだの向きを何度か回転させるとガスが出やすくなります。ポリープを切除した場合は、止血剤の点滴をするので、約2時間ほど休んでいただきます。
大腸内視鏡検査は、事前に診察が必要ですが、緊急を要する場合は応相談。副院長である女性医師による検査施行やトイレ付個室の用意など、女性の皆様にも検査を受けやすい体制を整えています。検査中に大腸ポリープや早期大腸がんを発見した場合は、検査中に切除する日帰り手術も行います。
検査結果の説明
- 検査をしながら説明しますが、組織を採取した場合やポリープを切除した場合は、病理検査が10〜14日程かかるため、再度受診いただき説明します。
検査後の飲食
- 特に制限なく、普段通りの飲食が可能ですが、ポリープ切除した場合は、数日間、刺激物などを避けて消化の良いものをとります。
大腸カメラ検査の費用
大腸カメラ料金について
大腸カメラ・大腸内視鏡検査の料金は、下表をご覧ください。
事前に詳細な金額の内訳などを確認されたい方は、ご遠慮なくお問い合わせください。
基本的に大腸カメラ内視鏡検査は保険適用で実施することができます。
下記の表は参考金額です。実際の診療内容によって金額は変動いたします。
検査(治療)内容
1割負担 | 2割負担 | 3割負担 | |
---|---|---|---|
大腸カメラ検査のみ | 約2,500円 | 約5,000円 | 約7,500円 |
大腸カメラ検査 病理組織検査 |
約4,000円 | 約7,000円 | 約11,000円 |
大腸ポリープ切除(1箇所) | 約8,000円 | 約16,000円 | 約24,000円 |
大腸ポリープ切除(2箇所) | 約9,000円 | 約18,000円 | 約27,000円 |
大腸ポリープ切除(3箇所) | 約10,000円 | 約20,000円 | 約30,000円 |
大腸カメラ・大腸内視鏡検査は、基本的には保険が適用されます。ただし、まれにですが、医師が内視鏡検査の必要なしと判断したものの、患者様の希望で検査を施行した場合は、自費となります。